睡眠時無呼吸症候群の治療法

持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)とは?

当クリニックでは、SASに対してCPAP治療(持続陽圧換気治療)が必要な患者さんのCPAPの導入および外来管理を行っています。適切なCPAP圧の決定、使用状況、治療効果等の管理を行います。
寝ている間に鼻マスクより空気を送り、軌道の閉塞を防ぐ治療法です。睡眠時無呼吸症候群の最もスタンダードな治療法で有効性・安全性が高く、即効性があります。副作用が少ないのも特徴です。CPAPは健康保険の適応となる治療法です。3割負担の場合、毎月約5,000円の費用負担で治療が可能です。

通院治療について

CPAPはSASの重症度基準を満たした患者さんに対して保険診療としての治療が認められている治療法です。この治療は人工呼吸器に準じた治療器具を用いた治療法であり、適切な治療管理を継続していくために、月に一度のクリニック受診が保険診療の条件となっています。病気や治療状態の変化を見逃さないためにも、必ず月1回の外来受診を行ってください。
使用目標の最低ラインとされているのが試用期間の80%以上の日で使用すること、4時間以上の使用とされていますが、毎日6時間以上使用することが最も良い状態となります。

マウスピース

マウスピースは、イビキや無呼吸の程度が比較的軽症〜中等症の方に適しています。寝ている間に装着することで、下顎が前に移動し気道を拡げ、イビキや無呼吸を軽減させます。*マウスピースは歯科医院で作成していただきます。

外科的手術

イビキや無呼吸の原因が、肥大した扁桃や長い軟口蓋の場合、それらを切除し気道が塞がらないようにする手術です。

CPAP療法についてよくある質問

CPAPで睡眠時無呼吸症候群は治りますか?
CPAP療法は、近視に対して眼鏡をかけている状態と同じように、CPAPを使い続ければいつか睡眠時無呼吸症候群が治る、というものではありません。CPAPをお使いの患者さんで、CPAPを離脱する(中止する)ためには、手術や減量で体の状態に変化が起こったり、マウスピースなどの他の治療法を選択する必要があります。睡眠時無呼吸症候群の重症度が高く、統計学的に他の治療法、対処法が困難と予測される患者様もいらっしゃいます。
CPAPの離脱やCPAP以外の治療法を希望される患者様は、一度ご相談下さい。
CPAPは毎日使用しなければいけませんか?
CPAPの使用目標は使用期間の80%以上の日で使用し、さらに1日4時間以上が最低ラインの目標値となりますが、最も良いのは毎日使用し、かつ1日6時間以上使用して頂くことです。
これらの数字の根拠は、その数値以上にCPAP治療を行った患者様はそれ以下であった患者さんに対して、生命予後(余命)や、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症の発症頻度が明らかに良好であったというデータに基づいています。
ただし、毎日CPAP治療を行う事が最善ではありますが、旅行や仕事の都合で、月の内2、3日CPAPが使用できない日があったとしてもそれほど心配する必要はないでしょう。
CPAPをしていても眠気が取れないのですが?
睡眠障害がない方でも日中の眠気を感じることはあり、眠気を感じただけでそれがすぐに病的であるとは言えません(“眠気の状況”アンケート:ESSで、12点以下は正常範囲内の眠気と考えられています)。CPAP治療を行ってAHI(RDI、無呼吸低呼吸指数)が正常範囲内でコントロールできている場合、一概には言えませんが、眠気の原因は純粋な睡眠時間の不足によることが多いです。
全人口の1、2%で長時間睡眠者、短時間睡眠者と呼ばれる、一般の方と必要睡眠時間が異なる方がいらっしゃいますが、残りの98%の方にとって、日中の正常な脳活動が得られ、睡眠時間の不足から来る眠気を防止するためには7時間台の睡眠時間が必要とされています。
眠気の原因が睡眠不足から来るものか、そうでないかを確認する方法は簡単です。7時間睡眠を取る日を3、4日続けましょう。それにより眠気が改善した場合は、睡眠不足が眠気の原因といえるでしょう。CPAPは睡眠の質を改善する優れた医療機器ですが、必要な睡眠時間が短縮できるものではありません。良質の睡眠を得るために睡眠時間もしっかりと確保しましょう。
CPAPをしていても自覚的な改善がありませんが?
CPAP導入当初は眠気に対する高い効果が実感できたのに、しばらく使用し続けていると、再度眠気を感じるようになる方がいらっしゃいます。それは使用当初はCPAPによって睡眠の質が劇的に変化したことでそれが実感として認識できたのに対し、その後安定した睡眠に体と脳が慣れ、正常の方並みの眠気を感じ出したことが原因として考えられます。
毎月のデータ確認で、AHI(RDI)が正常の値を示しているのであれば、睡眠時無呼吸症候群の治療効果に関しては大きな心配はありません。また、もともと眠気などの自覚症状に乏しい方もいらっしゃいます。症状の改善のためというよりも、睡眠時無呼吸症候群による将来的な合併症の頻度を減らすために導入された方は自覚的な改善は残念ながらない方もいらっしゃいます。